久しぶりにファナック以外のCNC装置を使った設備の電気設計をしました。 三菱電機のC80シリーズです。MELSEC iQ Platform対応のNC-CPUですが今回はシーケンサCPUがR04CPU、NC側がR16NCCPUで、マルチCPUシステムの扱いも本当にしばらくぶりです。
C80は調べたところ2016年に発表されてますが、今までこれを使ったシステムはよそでは見たことないし弊社での設計案件も無かったので、まったくの新顔といったところです。
まあ、長らくやっていないと言いながらも、三菱のNCは、C5、C6、C64、C70・・・となんだかんだとちょいちょい関わっているため、全くわからないとかすっかり忘れているというわけでもありません。しかし最後のC70なんていったい何年前に触ったことがあるか、正確に覚えてないほどです。
C80についてざっくりした感想を言うなら、C70の系統から引き継がれている部分もあれば、そうじゃないところもあったりしますが、がっつりとCNCになってるというよりも、NCなんだけど結構簡易的にだけど本格的な事もやれちゃうよ、みたいな雰囲気がシーケンサ一体型のスタイルから垣間見れます。実際、機能的には三菱のCNC E80シリーズやM80Wシリーズとは異なっています。省略されている機能もあればC80のオリジナル機能もあるので必要に応じて機種を決めればよいかと思われます。
さて、三菱シーケンサーといえば使うPCソフトは「GX Works2」が多いパターンですが、CPUがiQ-Rシリーズになると「GX Works3」の出番です。これはFX5シリーズでも使いますが、正直言うとソフトの起動時、立上りがすごく遅いので何だかあまり使いたくなくなるんですよ。
キーエンスのKV STUDIOもそうなんだけど、新しいPC、新しいというか最新のCPUかそれに近いものを採用しているPCじゃないと、動作がもっさりしていて使い勝手が悪いです。Windows11の問題もあるかもしれませんが、ソフトはなるべく軽快な動作になるようしてほしいです。
新しいPC使えばいいんでしょうが、シリアルポートが無いとか、いろいろ現場で使う事を考えると導入コスト以外にもちょっと制限が多いです。
起動した後はパラメータ設定ですが、ちょっと分かりやすいのか分かりにくいのか、GX Works2とは画面構成や操作方法が違っているので、最初は慣れが必要ですね。 ちなみにC80シリーズ用に設定するパラメータやデバイスなどは、C80のシリーズ 結合・セットアップ説明書(IB-1501449)に記載されているので、まずはその通りにやればOKです。マニュアル一式は三菱電機のサイトからPDFをダウンロードして、面倒ですがとりあえずは全巻に目を通しましょう。
NCパラメータは参考にできる設備がなくて、ほとんど最初からの設定だったので、ちょっと時間がかかりましたね。実機でトライ&エラーでいろいろ試せたのは早期解決になりました。それに三菱電機メカトロニクステクノロジーズさんのサポートもあったので助かりました。
機械調整はハマりポイントもいくつかありましたが、一番時間かかったのは主軸オリエンテーションセンサ関連の確認調整ですね。これは最悪でした。位置検出用のギヤが表裏反対についていて、メカ組付けの人も気が付かなくて、ひたすら取説と現物を見比べてようやく発見しました。そんなのわからんよね。分厚い取説見ながら組付けてるわけじゃないし、図面もそこまで細かく記載してないし。メカの担当はこれでいいものだと思って組んでるし、電気屋は組付けてある状態で問題ないはずと思ってるし。これには参りました。
C80で何か特筆すべきところがあるかと言うとウィンドウ機能かなあ? 他のE80等のNCにはありませんが、C80には「GOTウィンドウ」という機能があって、CNC側のデータをGOTから直接読み書きできます。これとは別にシーケンサCPUとCNCデータの受渡する「シーケンサウィンドウ」の機能もあります。紛らわしいしややこしいので、この辺はPLCインタフェース説明書(IB-1501258)をよく読んで作りこむ必要があります。
あとはバックアップが簡単なところはいいかなと思います。GOTにUSBメモリを挿してGOTの機能で一括全データバックアップできるので、これは便利です。バックアップデータには当然。 シーケンサ側のパラメータ、プログラム、NC側のパラメータ、プログラム、その他デバイス値なんかも含まれていて、当然ですがGOT画面データも入っています。まあもろもろな物が一括して取れるのは楽でいいです。これは高評価です。C70がどうだったかは記憶にありません。同じだったようなそうでなかったような、何か違う方法でやってたのかも。
今回の設備はイタリアだかどっかの昔の機械を参考にして、同じような加工ができるように国内で設計製造したものです。国内でこのスタイルの機械を製造してるところは無いみたいですね。加工物を水かけて冷やして氷で固めて、この氷で加工物をクランプして氷と一緒に削って加工する、なんて言うのはちょっと想像つきませんでしたね。
たぶん機械的にも電気的にも、ちょっとばかしのノウハウが企業秘密なこともあるので、あまりぶっちゃけられないんですけれど。
三菱の最近のNC採用するということでいろいろ勉強させてもらいました。またC80案件があれば、次はもう少しスムーズにやれそうな気はします。まあ、次回の案件があればってことですけど。