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FANUCのCNCをイーサネットを使って遠隔監視・情報書き込みを実現する方法

工場の生産性向上や効率化を目指す現場では、設備の稼働状況をリアルタイムで監視し、必要な情報を一元的に管理することが求められています。かつては工場内で設備の異常が発生した場合、アンドンランプのような物理的な表示装置を使って状況を確認するだけでした。しかし、イーサネット通信等の通信技術の普及により、より高度な遠隔監視やデータ管理が可能となり、現在ではパソコンを使った効率的な管理方法が広がっています。

ここでは、FANUCが提供する「CNC Application Development Kit(以下、ADKと略)」を活用し、イーサネット通信を通じてCNCの状態を遠隔監視し、場合によっては設備へ情報を書き込む方法について解説します。


遠隔監視と情報一元化の重要性

生産設備の状態を把握することは、生産性の向上や予防保全の観点から極めて重要です。現在では、イーサネットを活用して以下のような目標が実現されています:

  • 稼働状況のリアルタイム監視:稼働率や異常発生状況を即座に確認。
  • 生産管理の効率化:収集したデータを分析し、生産計画の最適化に活用。
  • 定期保全の実現:設備の状態データに基づいた予測保全。

これらを実現するために、通信技術を活用した小規模から大規模なネットワーク構築が行われています。特に、FANUCが提供するADKは、このようなニーズに応えるソリューションの一つです。


FANUCのCNC Application Development Kit(ADK)

ADKは、FANUC製CNC装置向けにアプリケーションを開発するための機能を幅広く提供するパッケージです。以下は、現在のADKに含まれるツールやライブラリの一覧です:

  1. FANUC PICTURE
    CNC装置の操作画面をカスタマイズするためのツール。
  2. FOCAS1/2ライブラリ
    CNCとパソコン間でのデータの読み取り・書き込みを行う通信ライブラリ。
  3. CNC画面表示機(HS SB版、イーサネット版)
    CNC装置の画面を遠隔地のパソコンで表示するためのツール。
  4. 基本操作パッケージ2
    CNC装置の基本操作を支援するためのツールセット。
  5. ラダー編集パッケージ
    CNCのシーケンス制御を行うラダー図を編集するためのツール。
  6. 稼働状況管理パッケージ(HS SB版、イーサネット版)
    CNCの稼働状況を監視・記録するための管理ツール。
  7. 機械操作メニュー作成ツール
    操作性を向上させるためのカスタムメニュー作成ツール。
  8. メインメニュー画面カスタマイズツール
    CNCのメイン画面をユーザー仕様に合わせてカスタマイズするツール。
  9. 機械アラーム診断用ガイダンステーブル
    CNC装置で発生したアラームの診断を支援するツール。
  10. マクロライブラリ
    • 30iシリーズ用
    • 0i-Fシリーズ用
    • 0i-Dシリーズ用
    • Power Motion i-A用
      CNCで使用するマクロを作成・管理するためのライブラリ。
  11. C言語エグゼキュータ用C言語ライブラリ
    • 30iシリーズ/0i-F用
    • 30iシリーズCPUカードG用
    • 0i-Dシリーズ用
    • Power Motion i-A用
      CNC向けアプリケーションをC言語で開発するためのライブラリ。
  12. アクセプタンステスト支援ツール
    CNC装置の受入検査を効率的に行うためのツール。
  13. 電子カムサポートツール
    電子カムの設計や動作をサポートするツール。
  14. 操作履歴変換ツール
    CNC装置の操作履歴を解析・変換するためのツール。
  15. PANEL iH Pro/PANEL iH用 iHMIライブラリ
    FANUCのiHMI(インターフェース)をカスタマイズするためのライブラリ。
  16. 実行マクロ変換ツール
    CNC装置の実行マクロを変換するためのツール。
  17. Gコードガイダンスカスタマイズツール
    CNCで使用されるGコードのガイダンス画面をカスタマイズするためのツール。


ADKに含まれるツールやライブラリは、バージョンアップや製品ラインナップの変更に伴い、新しい機能が追加されたり、不要になった機能が廃止されたりする可能性があります。


FOCAS1/2ライブラリを用いたカスタム通信

ADKの中でも今回特に注目すべきは、FOCAS1/2ライブラリです。このライブラリは、以下のような機能を実現します:

  • データの読み取り:NC、PMCの状態データを取得。
  • データの書き込み:NC、PMCの設定や変数等の書換え。

主な活用例

  1. 加工状況の監視
    加工中の負荷データや加工結果をカスタムマクロ変数に格納し、それを遠隔のパソコンで監視することで、加工状況や結果をリアルタイムで確認可能です。
  2. パソコンからの制御
    パソコンで取得したデータをもとに判断を行い、別のカスタムマクロ変数に値を書き込むことで、NC装置の動作を制御することも可能です。

複数台との通信

FOCAS1/2ライブラリを使えば、NCのIPアドレスを指定するだけで複数台のCNC装置と通信できます。ただし、通信負荷が高まり過ぎないよう、以下の点に注意が必要です:

  • 通信間隔の設定:数秒ごとの状態監視など、適切な通信頻度を設定。
  • 台数制限:一度に通信する台数を制限し、ネットワーク負荷を軽減。

工業ネットワークと汎用イーサネット通信の注意点

イーサネットを活用したCNCとの通信は便利ですが、一般的なイーサネットを工場の設備間通信で使用する場合、以下の点に留意する必要があります:

  • 通信速度と帯域の制約
    通信負荷が高いと、データの遅延や取りこぼしが発生する可能性があります。Ethernet/IPとの通信経路が共有できますが、大量のデータを一度に取得する場合は、工業用プロトコル(例:EtherNet/IP)とは挙動が異なります。Ethernet側の通信には遅延が起きやすいため、余裕を持った設計が必要です。

まとめ

FANUCのCNCをイーサネットを使って遠隔監視・情報書き込みを行うことで、工場内の情報を一元的に管理し、生産性や保全性を向上させることができます。特に、ADKに含まれるFOCAS1/2ライブラリを活用することで、NCのデータ取得や制御を柔軟に行うことが可能です。

ただし、ネットワーク負荷や通信プロトコルの違いには注意が必要です。適切な通信設定を行い、安全かつ効率的なデータ管理を実現しましょう。これにより、工場内の設備管理がさらに高度化し、現場の生産性向上に寄与することが期待されます。


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