そもそも、NC加工機で倣い加工をするのは少しおかしい話です。NC加工機とは、本来プログラムを組んで同じ加工を繰り返し行うためのものです。倣い加工は、形を真似る、つまり元となる形状に倣って切削などを行う加工方法であり、どちらかというとNC加工機ではなく、サーボ制御を応用して行う方が適していると言えます。
NCプログラムは事前に作成し、加工する際の工具軌跡を精度よくプログラミングすることで高い精度の繰り返し加工を保障しています。そのため、倣い加工には本来向いていません。ただ、それでもNC加工機がこれだけ普及している中で、「倣い加工のような使い方がしたい」という要望が出てくることもあるでしょう。
では、そのような場合はどうするべきでしょうか?
倣い加工を実現するための方法
まず考えられる方法として、元となる形状をあらかじめ測定し、その軌跡をプログラム化しておくという手段があります。しかし、これでは結局、通常のNCプログラムを組んで加工するのと大差ありません。
倣い加工が必要になるのは、以下のようなケースです。
元の型が一回きりしか使わない場合。
前加工の出来具合によって微妙に形状が異なる場合。
作るたびに微調整が必要なカスタム品の場合。
こうした場合には、NCプログラムだけでなく別の工夫が必要です。
方法1: 測定しながら工具を動かす
元となる型を測定しつつ、NC加工機の工具を動かす方法です。XYZ軸すべてを同時に制御するのは難しいかもしれませんが、例えばZ軸だけを倣い加工させる形で測定対象の形状に合わせて制御することは可能です。
具体的には、以下のような装置や方法を利用します。
変位センサーやプローブを使用して、接触式または非接触式で元型の形状を測定。
測定した凸凹やカーブ、直線のデータを基にNC加工機の軸を動かす。
例えば、NC旋盤でZ軸を一定速度で動かしながら刃物台をX軸方向の元型の形状に合わせて動かす場合、NCプログラムだけでは実現不可能です。なぜなら、NCプログラムではG01などの命令を一行実行している間に他の軸を動かすことはできないからです。
(G01 Z-500.0 F200; このような命令の実行中(Z軸移動中)にX軸はNCプログラムで動かすことはできません。)
方法2: PMC軸制御を活用する
上記理由により倣い加工を実現するには、NC加工機の制御をNC制御からいったんPMC軸制御に切り替え、変位量に応じてPMC側から軸を動かす必要があります。これによりZ軸移動中でもX軸の位置を移動する制御が可能となります。以下の手順で実現が可能です。
測定データをリアルタイムで取得
測定器をパソコンに接続し、パソコンで測定値をリアルタイムに読み取ります。
測定データをNCに渡す
測定値をNCのマクロ変数にPCから書込み入力します。(イーサネットで接続し、通信で書き込みます)
PMC制御による軸移動
PMCが書き込まれたマクロ変数を読み取り、その値に応じて軸を動かします。Mコードを追加して、PMC軸制御の開始と終了をコントロールできるようにします。PMC軸制御中のX軸はNC側のGコードによる移動はできなくなります。
方法3: 機械的な治具の使用
電気的制御ではなく、機械的に倣い加工を実現する治具やツールを用意する方法も考えられます。この場合、特定のジグを製作し機械的に倣い加工させる仕組みを導入します。この場合は半手動機となるためX軸はサーボオフするなど対策が必要ですが、NC制御しながら手作業で機械に触れ続けなければならないため、安全性には問題が残ります。
実現可能性と課題
倣い加工を電気的制御で行う場合、PMCや通信の処理時間による遅延が発生するため、高いレスポンスが求められる場合には適しません。しかし、以下のような条件であれば有効に機能する可能性があります。
軸の変位量が比較的小さい(数mmから十数ミリmm程度)。
凸凹の変化が緩やかで、極端に大きな変位が発生しない。
高レスポンスが不要な倣い加工であれば、これらの方法で十分実現可能です。ただし、実際に加工してみなければ最終的な有用性は判断できません。センサーの種類や検出方法、X軸とZ軸の送り速度も影響します。
以上が、NC加工機で倣い加工を実現するための考え方と方法の一つです。それぞれの方法を状況に応じて試してみる価値はあるでしょう。
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