情報

ファナック10/11/12シリーズのPMCとPCカセット

FANUCの旧タイプのCNCシリーズ「10/11/12シリーズ」、このシリーズは2024年現在、発表から40年近く経過していますがいまだに現役で稼働している設備も多く、経年劣化による電装品の故障リスクも伴ってます。ここではファナック 10/11/12シリーズのPMCの仕組みやPCカセットの構造、故障時の対応について解説しています。


ファナック 10/11/12シリーズのPMCとその種類

ファナック 10/11/12シリーズでは、PMCとして以下の2種類が採用されています。

1. PMC-I

PMC-Iは、脱着が容易なカセット型で提供され、記憶容量に応じて以下の3種類に分類されます。

  • PCカセットA (16KB)
  • PCカセットB (80KB)
  • PCカセットC (208KB)

カセット表面には「FANUC PC CASSETTE A」といったような表記がされており、種類の確認が簡単に行えます。

2. PMC-J

PMC-Jは、ROMモジュールとして提供されるタイプで、記憶容量ごとに以下の種類があります。

  • MEM2A (48KB)
  • MEM3A (112KB)
  • MEM4A (176KB)
  • MEM5A (304KB)

これらのいずれのタイプでも、ラダーシーケンスに使用できる記憶容量は最大80KBです。上記のカッコ内はPascalを含めたデータの最大容量です。


ROMカセット化の利点と0シリーズとの比較

ファナック 10/11/12シリーズの大きな特徴として、ROMがカセット化されている点が挙げられます。これは従来の3/6/9シリーズと比較して、以下の利点をもたらしました。

カセット化によるメリット

  1. 故障リスクの低減
    従来のROMは直接基板に実装されており、脱着時に足折れや破損が発生しやすい問題がありました。カセット化によってこれらのリスクが大幅に低減されています。
  2. 扱いやすさの向上
    カセット化により、複数のROMを一括で脱着できるようになり、作業効率が向上しました。

一方でほぼ同年代に発表された「0シリーズ(0M/0T)」ではコストダウンが目的だったためか、カセット型ではなく基板に直接ROMが実装されています。


PCカセットの構造と故障対応

PCカセットは内部に以下の2つの主要な部位で構成されています。

1. ROMチップ

プログラムやデータが記録されている部分です。

2. ロジック回路

ROMチップのデータを読み書きするための補助回路です。

故障時の問題点

PCカセットが故障した場合、「ROMチップが故障しているのか」「ロジック回路が故障しているのか」を判別するのが非常に困難です。そのため一律に「PMC-ROMの故障」、「ROMカセット、ROMの故障」、とひとくくりにされてしまいます。

PMCラダー屋.COMでの対応

FANUC 10/11/12シリーズ用のPCカセット故障に際には、以下のような対応を行っています。

  1. 故障したカセットを送付してもらい、カセット内蔵の基板からROMチップを分離します。
  2. ROMチップのデータを直接読み取ることで、ROMの故障なのか、周辺のロジック回路の故障なのか特定を行います。
  3. ROMデータが無事な場合は、ROMチップから複製のデータを作成し、新しいPCカセットに書き込んで復旧を支援します。

Pascalプログラムが復旧に与える影響

ファナック 10/11/12シリーズの一部の設備では、ラダーシーケンスの他にPascalプログラムが使用されていることがあります。この場合、復旧の難易度が大幅に上がります。

Pascalプログラムの課題

  1. データの入手困難
    Pascalプログラムの元データは、現在ほとんどのメーカーで提供されておらず、バックアップが存在しないケースも多いです。PCカセットのデータ作成は、ラダープログラムにPascalプログラムをリンクさせることでROMデータを生成します。Pascalプログラムが無い場合このリンク作業ができないため、ラダー単独での機械制御はうまくいきません。
  2. ラダーシーケンスでの代替が困難
    簡単な内容を表示するだけのものであれば、ラダーで代替することが可能ですが、Pascalプログラムでは座標計算や三角関数を使用した複雑な処理が含まれていることがあり、これをラダーで代替するのはほぼ不可能です。

復旧が難しい場合の選択肢

  • 機械の復旧を諦めて代替の生産方法を模索する。
  • Pascalを使用せずに制御可能なシステムに切り替える。
  • NC制御装置を新しいものに換装する。

こちらの関連記事もご覧ください。
FANUCの10/11/12シリーズ PMC-I で Pascal が実行されているかどうか確認する方法

ただし、どの選択肢でも復旧までに相当な時間が必要になることを覚悟する必要があります。


その他

  1. 熱処理による基板のダメージ
    故障したカセットからROMチップを取り外す際にはハンダを溶かすため熱処理が必要ですが、この作業によって基板や他の部品にダメージが発生することがあります。このため、ROMを取り外したカセットはFANUCの保証対象外となります。最終的に設備復旧できる見込みができたならば、保守部品としてFANUCから新しいPCカセットを購入し、それを使用するようにしてください。
  2. 基板の再利用
    保障外となったものは、PMCラダー屋.COMで買取後、保守用部品として修理・再利用されることもあります。

まとめ

ファナック 10/11/12シリーズは、PCカセットの採用により扱いやすさや信頼性が向上した一方で、Pascalプログラムの有無やデータの管理状況によって復旧の難易度が大きく変わります。復旧の迅速化には、以下のポイントが重要です。

  • ラダーシーケンスやプログラムデータの定期的なバックアップを取ること。機械が動いているうちにバックアップを作成しましょう。特にPMC-ROM、ROMカセットはバックアップが容易ではないため、生産管理と合わせて計画的に実施することをお勧めします。
  • 故障時は設備メーカやFANUCへ連絡し、適切な対応を進めること。対応が進まないようであれば、PMCラダー屋.COMへご相談ください。(電話、FAX、お問い合わせフォーム、で受け付けています。)

これらの対策を講じておけば、トラブル発生時のダウンタイムを最小限に抑えることができます。特に古い設備を使用している場合は、日頃の管理が重要となるでしょう。

PMCラダー屋.COMではこれらのROMデータのバックアップを含めたご相談に応じています。お問い合わせは当サイトのお問い合わせフォームをご利用ください。

関連記事

TOP